私的経済ニュース解読

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人材派遣健康保険組合が解散を決定。健保組合の解散はどう影響する?

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先月のニュースだったのですが、私が認識していませんでした。私にとっても影響ありありの話なので詳しく追っていきたいと思いますね。

日本経済新聞 2018/921

人材派遣会社の従業員と家族が加入する「人材派遣健康保険組合」は21日、2018年度末で解散することを決定した。約50万人にのぼる加入者は中小企業向けの全国健康保険協会(協会けんぽ)に移り、08年の協会けんぽ設立以降、最大の移行人数となる。 医療費の支出増や後期高齢者医療への支援金の負担などで財政状況の悪化が避けられないと判断した。協会けんぽには年1兆円規模の国庫負担が投入されている。派遣健保から加入者が移ると国庫負担は100億円規模で増える見通しだ。

 健康保険組合というのはサラリーマンなどが加入する「社会保険」における健康保険の一種です。

 健保組合とは何か?

中小企業のサラリーマンなどは「協会けんぽ」という都道府県ごとに設置された健保に加入しているのですが、大企業や業界連合などが「健康保険組合」という独自の健康保険を作っています。

今回ニュースになっている「人材派遣健康保険組合」もその一つですね。

で、人材派遣健康保険組合は解散して、加入者は「協会けんぽ」に移ることになります。

おすすめ関連記事:同じ社会保険(健康保険)でも違う?協会けんぽと健康保険組合の違い

 

そもそもなんで健保組合とか作るのか?

健保組合を作るメリットはいろいろありました(過去形)

健保組合が保険者となることで、集めた保険料を使って色々できたんです。たとえば保養所をつくったりするのも健康保険が集めたお金です。

もちろん、本筋は医療費としての支払いですが、現役世代が加入者の健保組合は「保険料収入>保険料支出」だったわけです。

実際に、集める保険料も協会けんぽよりも安く済ませているところが多いです。

 

仕送りの増加で健保組合は厳しい

たとえば、今回解散をする人材派遣健康保険組合も、通常の健康保険の経営では順調です。

たとえば、平成29年度の収支を見てみましょう。

http://www.haken-kenpo.com/member/info/files/kessan_h29.pdf

 

まず、人材派遣健保組合の保険料収入は:175億円です。一方で支出は以下のようになっています。

支出額

  • 医療費:594億円
  • 健康診断等:27億円
  • 相互扶助のための拠出:16億円
  • 事務費:7億円
  • 国へ納める納付金:497億円

合計:1141億円

 

収支はトントン程度ですね。解散に至る理由は収支改善のために引き上げている保険料水準です。支出のために保険料の引き上げを続けており、これ以上に引き上げるくらいなら協会けんぽに入ったほうがマシという判断になっています。

さて、注目すべきは「国に納める納付金(拠出金)」ですね。予算の半分弱がこれです。

日経新聞:2017年7月29日朝刊

拠出金とは高齢者の医療を支援するために求められている資金負担です。(1)75歳以上が入る後期高齢者医療制度への支援金 (2)65~74歳の加入者が多い国民健康保険(国保)の財政を支える前期高齢者納付金――などです。

毎月払う保険料は自分らの医療のためだけに使われていると思っている人もいるかもしれませんが、実は「高齢者医療のために全体の4割が使われている」のです。

というわけで、健保組合が支払っている拠出金(いわゆる仕送り)が多額となっており、健保組合の財政を悪化させているわけです。

 

今後も解散する健保は続出する模様

現在の健康保険組合は多くが赤字かそれに近い状態となっています。赤字でも維持できるのは過去の積立や会社による支援があるからです。

そうしたものが無くなれば、健保組合は消え去る運命になるでしょう。

そして、健保組合が消えればその負担は「国」に行くことになります。結果として日本の健康保険制度はヤバイ状態であって、正直現状維持ができるような状況ではありません。

 

話が大きすぎて、個人の問題とは別に感じてしまうかもしれませんが、働く私たちに対する影響も大きいです。

 

参考:医療費の節約と健康保険のために個人ができること / 節約.net

大規模な改革は政治に任せなければならない面もありますが、個人レベルでできることもあります。医療費を無駄にしないという取り組みをもっと考えていかないとダメですね。