株式市場(相場)において、時に相場観と関係なく、売りたくなくても売らなければならない株というものがあります。
特に、今回のような相場ではそうした売りがよく出てきます。
追証売り、強制決済売りなどと呼ばれます。今回はそんな信用取引の評価損(含み損)によって売らざるを得ない売りの仕組みについてみていきたいなと思います。
松井証券信用取引評価損益率
松井証券で信用取引口座をお持ちのお客様に限定して、「マザーズ銘柄のネットストック信用評価損益率」を配信しています。
— 松井証券 (@Matsui06) 2018年10月29日
29日の信用買い評価損益率は-30.29%(前営業日比-2.38pt)
詳細はこちらhttps://t.co/rOK9XNXbuz#マザーズ #信用 #評価損益率
上記ツイートはネット証券大手の松井証券が毎日発表している、同社内の信用取引における信用評価損益率です。
信用評価損益率というのは、信用取引引きをしている人がどれだけの「含み損」を抱えているか?という指標です。
そもそも信用評価損益率とは?
買い手の評価損益÷買い建て額で計算できます。
マイナス10%程度になると多くの投資家が含み損に耐えることができなくなり「投げ」が発生しやすいといわれており、この水準が近付くとこうした売りによる相場のさらなる下落があるといわれています。
また、この近辺が一つの底として認識されることが多いです。これからさらに下がって、マイナス20%程度になってくると追証(追加証拠金)の発生による投げや強制決済などが生じやすくなり、さらに下げるといわれています。ただし、マイナス20%という信用評価損益率になっている状況はかなり売り込まれていると感がられます。この付近になると大底として認識されやすくなります。
引用元:信用評価損益率で相場の天井・底を探る|Money Magazine
ということで2018年10月29日時点の、松井証券の-30.29%というのは、相当な損失を抱えているということになりますね。
追証と強制決済
追証というのは追加証拠金の略です。
信用取引は、証拠金を預けてその3倍程度の取引をすることができるようになっています。
100万円なら約300万円の株を買えるわけです。なのですが、証拠金の割合を最低でも20%を上回るようにしておかないといけないというルールがあります。
証拠金比率=(証拠金+含み損益)÷建玉(信用取引で建てている総額)
仮に100万円の証拠金で300万円の信用取引を行っているとします。そして、現状のように2割(300万円×0.2=60万円)の含み損を抱えたとしましょう。
証拠金比率=(100-60)÷300=13.3%
となります。20%を下回っていますね。この場合、証拠金比率を20%にするまで、現金を入金しなければなりません。これが追証です。このケースだと60万円の証拠金が必要なので20万円ですね。
とりあえず、この入金ができればOKです。
入金できないなら決済するしかない
万が一入金ができない場合は、建玉を減らして(信用取引で買っている株を売って)維持率を回復するしかありません。
前述の場合だと、建玉を200万円にまで減らせば維持率は20%を回復します。
放置すれば強制決済
追証を入金しない、あるいは損失が大きすぎて信用取引の建玉を決済できないといった場合には、証券会社による強制決済が行われることになります。
成行で強制的に決済注文が発注されます。
追証売り、強制決済売りで株価が大きく下がる可能性
こうした強制決済による売りは、その時点での株価が割安であるなどは関係ありません。売らなければならない売りなので価格は気にしません。
特に証券会社による強制決済は全株を成行で売りに出します。
そのため、今回のように相場が大きく下落して、相場全体の信用評価損益率が-30%などになると、マザーズ市場全体の銘柄に対して幅広く売り注文がでるという状況になります。
特に、前場の寄り付き、前場引けにかけて、後場引けにかけてなどにそうした機械的な売りが出やすくなります。
値ごろ感で全力買いとかすると、そうした売りでやられてしまう可能性も十分にあります。直近の暴落からみて、信用ポジションの整理は進んでいないと見るべきかと思いますので、ここから買い向かう方もご注意くださいませ。
十分に余力を残した注文をお勧めしますよ。「行き過ぎもまた相場」といいますからね。