一般的に、金利というものは「長期金利>短期金利」となっています。これを「順イールド」と言います。平常時はこの状況になります。
一方で「短期金利>長期金利」というなるような状況もあります。これを「逆イールド」といいます。これはマーケットが「将来の金利低下」「デフレの進行」などをマーケットが予想していることを示しています。
この逆イールドとなる、長短逆転が米国で2018年12月3日や2019年3月22日に発生し、株安に発展しています。この逆イールド(長短逆転)の問題を見ていきましょう。
短期金利と長期金利の性質の違い
短期金利のような期間が短い金利は、金融政策(日本なら日銀、米国ならFRBなどの政策)による影響が大きくなります。一方で10年金利のような期間が長いタイプの金利は将来的な物価水準や将来の金融政策の予想などを反映して動きます。
金融政策においては、「景気が良くなる→バブルを防ぐ為に政策金利を上げる→景気が悪化する→政策金利を下げて資金供給を増やす」といった方策がとられます。
こうした景気の波をコントロールするために金融政策が実施されるわけで、株式投資でも「景気循環」して相場を占う際に利用されます。
で、「長期金利が下がる」というのは多くの投資家が今後の長期金利が下がる(景気緩和に向かう)またはデフレーション(デフレ)になると予想しているということになります。
景気循環的には「逆業績相場」と呼ばれるタイミングにあたってくるわけです。
長短金利の逆転で投資家は景気後退(リセッション)を心配している
2019年3月22日の米国債利回りを見ていきましょう。
- 米国債 3ヶ月:利回り2.44%
- 米国債 6ヶ月:利回り2.46%
- 米国債 12ヶ月:利回り2.43%
- 米国債 2 年:利回り2.31%
- 米国債 5 年:利回り2.23%
- 米国債 10 年:利回り2.42%
10年債利回りが2.42%に対して、3か月利回りは2.44%、12か月利回りは2.43%と長期金利を短期金利が上回るという状況になっているわけです。
実際には長短金利の逆転=リセッション(景気後退)というわけではありません。
各国によって考え方は違いますが、明確な景気後退局面といのはGDPが2四半期連続でマイナス成長をしている場合や、景気動向指数が50を下回る場合などが挙げられます。
長短金利の逆転は、多くの投資家が“そうなることを心配している”という状況なわけです。投資家心理はリスクオンムードとリスクオフムードがあるため、相場が確実に将来を表しているわけではありませんが、景気の先行きに対して悲観的な投資家が増えているという状況を意味しているわけです。
なお、米国景気における重要指標は「ISM製造業景況感指数」です。次の発表は2019年4月1日です。2019年2月は54.2と50を上回っていますが、40を割ってくるような状況になると景気後退が明確に意識されそうです。