NHKが発表した2018年度の決算によると、受信料収入が前年度より209億円増加し、7122億円に達したそうです。5年連続で最高益を更新しており、事業収支差金(利益のようなもの)は271億円と従来予想の40億円から大きく上ぶれしました。
理由はいくつかありますが、NHKの受信料契約をめぐる裁判がNHK有利な方向で結審したことを受け、契約率が上昇したことが原因とみられます。
NHKに有利な判決
- 受信料契約の義務規定に関する訴訟
- ワンセグに関する訴訟
- ホテル1室1部屋扱い
この3つが大きいですね。
受信料契約の義務規定に関する訴訟
2017年12月6日(最高裁)
放送法64条1項は,日本放送協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者に対しその放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,日本放送協会からの上記契約の申込みに対して上記の者が承諾をしない場合には,日本放送協会がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め,その判決の確定によって上記契約が成立する。
放送法64条1項は,同法に定められた日本放送協会の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の,日本放送協会の放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めたものとして,憲法13条,21条,29条に違反しない。
日本放送協会の放送の受信についての契約を締結した者は受信設備の設置の月から定められた受信料を支払わなければならない旨の条項を含む上記契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合,同契約に基づき,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する。
日本放送協会の放送の受信についての契約に基づき発生する,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(上記契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は,上記契約成立時から進行する。
上記は最高裁の裁判要旨となります。簡単にまとめると
- NHKの契約を拒否しても裁判して判決を受けたら契約を結んだことになる
- 契約締結日は受信設備の設置の月にさかのぼる
- 時効にはならないよ
という感じになります。結構えげつない感じです。これによって、契約拒否をしていた層に対してNHKは強気に、「じゃあ裁判しますよ、裁判になったら最初に訪問したタイミングからの契約になって遡りますけどいいですか?」っていう営業ができるようになるわけです。
ワンセグに関する訴訟
2019年3月13日(最高裁)
こちらは、テレビではない、ワンセグケータイに対する訴訟です。テレビは無いけどワンセグ携帯電話だけを所有している人にNHKの契約義務があるか?って話です。
NHKは受信設備を設置した人に放送受信契約を義務づけている放送法に基づき、テレビを持たなくてもワンセグの機能が付いた携帯電話を所持している人には受信契約の締結と受信料の支払いを求めています。
これを拒否した男性が起こした裁判で、1審のさいたま地方裁判所は契約の義務はないと判断しましたが、2審の東京高等裁判所は「放送法の『設置』という文言には携帯型の受信機を持ち歩く場合も含まれる」と判断し、1審の判決を取り消していました。 これについて、最高裁判所第3小法廷の山崎敏充裁判長は、13日までに男性の上告を退ける決定をしました。 これによって、ワンセグの機能が付いた携帯電話を所持していれば受信契約の義務があるという判決が確定しました。
最高裁の判例がでたことで、これまでグレーだといわれていたような対象先に対しても契約を求めることができるようになりました。
「え?自宅にテレビがない?でもそのケータイってワンセグ見れますよね?駐車場に泊まっているお車にカーナビ付いてますけど、あれってワンセグ放送見れますよね?じゃあ、契約してください」
ってな感じにできちゃうわけです。
カーナビ搭載のワンセグについても判例があります(地裁ですが)。
ワンセグ機能付きカーナビの持ち主に、NHKとの受信契約を結ぶ義務があるかどうかが争われた訴訟で東京地裁は5月15日、義務ありとする判決を下した。NHKによると、カーナビの受信料について争われた訴訟は初めて。
ここまでは個人ですね。NHKと契約しない方法みたいな情報って色々ありますが、穴が塞がれてきたので契約したくない方はそもそもNHKの募集人と話をしないのが一番ってことになりそうです。
ホテル1室1部屋扱いや社用車に関するもの
NHKの増収に絡む、もう一つの裁判としては、東横インなどのh問えるに対する訴訟もあると思われます。
NHKが大手ホテルチェーン「東横イン」を相手取り、未払いとなっている受信料の支払いを求めた訴訟で、3月29日に東京地裁が下した判決が話題になっている。判決では東横インが運営する235のホテル全室に設置するテレビ約3万4000台分について、未払いとなっている受信料、19億3000万円の支払いを命じた。
(2017年4月3日)
客室にテレビを設置しているのに受信契約をしていないとして、NHKがビジネスホテル「ドーミーイン」などを運営する共立メンテナンスに受信料支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は契約締結と約6100万円の支払いを命じた
(2015年10月31日)
この判決自体はいずれも地裁ですけど、ホテル側は部屋単位でNHK受信料を支払うことになっているわけです。
さらに、前述のカーナビやワンセグケータイも義務アリです。
たとえば、広く考えれば、社用車に設置してあるカーナビについても、それぞれ個別に受信料契約をしなければならいという事になってしまいます。
そんなこんだで、NHKをめぐる裁判は、NHKにとって、ほぼ完ぺきといえる内容になっています。そうした形で契約者を増やして7000億円という巨額の収入を得ているわけです。