金融広報中央委員会は、日本の個人の金融リテラシーの状況を把握するためのアンケート調査として金融リテラシー調査を行っています。2016年にも実施されましたが、2019年にも実施され、その結果が発表されました。
まずは、実際に問題にチャレンジしてみよう。実際の調査の中で、白黒はっきりつく問題だけをピックアップしてみました。
ちなみに、18歳~79歳を対象にして行われ、正答率は56.6%となっています。
- 20代:42.7%
- 30代:50.9%
- 40代:55.0%
- 50代:60.4%
- 60代:64.4%
- 70代:64.8%
と年齢が上がるほど正答率もアップしています。
以下が質問です。すぐ下の回答と説明は筆者によるものです。
なお、同調査結果については「PDF」で確認できます(長いです)。
家計の行動に関する次の記述のうち、適切でないものはどれでしょうか。
- 家計簿などで収支を管理する
- 本当に必要かを考えたうえで支出をするかを判断する
- 収入の内、一定額を天引きにする方法で貯蓄をする
- 支払いを遅らせるため、クレジットカードの分割払いを多用する
4が間違い。クレジットカードの分割払いは手数料負担が生じるため多用するのは適していません。
家計管理やクレジットカードに関する次の記述のうち、適切でないものはどれでしょうか。
- クレジットカードを自分の収入に合わせて計画的に利用する
- クレジットカードの未決済額は、実質的には借金である
- 手数料(金利)負担は、リボルビング払いでは生じるが、分割払いでは生じない
- 利用代金を支払わないと、以降のカード使用ができなくなることがある
3が間違い。手数料はリボ払いだけでなく、分割払いでも生じます。手数料率(金利)は年率15%程度と高いです。参考:クレジットカードの分割払い・リボ払いと手数料、金利
太郎と花子は同い年です。花子は25歳の時に年10万円の預 金を始め、その後も毎年10万円の預金を続けました。一方、太郎は25歳の時には預金をせず、50歳の時に年20万円の預金を始めました。二人が75歳になったとき、どちらの預金残高が多いでしょうか。
- 預け入れた金額は全く同じのため、二人の預金残高は同じである
- 各年の 預け入れ額が多いため、太郎の預金残高の方が
- 預け入れ額が多いため、花子の預金残高の方が多い
- 複利で利子がつく期間が長いため、花子の預金残高の方が多い
4が正解。花子のほうが運用期間が長いため複利効果によって預金残高は高くなる。参考:投資における「複利効果」とは?
一般に「人生の3大費用」といえば、何を指すでしょうか。
- 一生涯の生活費、子の教育費、医療費
- 子の教育費、住宅購入費、老後の生活費
- 住宅購入費、医療費、親の介護費
2が正解です。
契約を行う際の対応として、適切でないものはどれでしょうか
- 自分にとって、その契約が本当に必要なのかを、改めて考える
- 解約できるかどうかや、解約時に違約金が発生するかを確認する
- 業者から詳しく説明を聞いて契約し、契約書は後でゆっくり読む
- 契約締結に当たり、必要に応じて、第三者にアドバイスを求める
3が間違い。契約書はちゃんと読みましょう。
金融トラブルに巻き込まれないための行動として、適切でないものはどれでしょうか。
- 自分の個人情報はなるべく言わない
- 金融経済に関する知識を身に付けるよう努力する
- 判断に迷ったときは、業者を信じて一任する
- 購入しようとする商品の評判をインターネットで確認する
3が間違い。業者を一方的に信じるのは危険です。
インターネット取引において、適切でないものはどれでしょうか。
- セキュリティ対策ソフトを最新版にした
- メールが届いたが、心当たりのないアドレスだったので、開かなかった
- インターネットカフェのパソコンを使って銀行振込をした
- 入力事項に間違いがないか、何度も確認した
3が間違い。ネットカフェなどでパスワードを入力するのは危険です。
100万円を年率2%の利息がつく預金口座に預け入れました。それ以外、この口座への入金や出金がなかった場合、1年後、口座の残高はいくらになっているでしょうか。利息にかかる税金は考慮しないでご回答ください。
- 102万円
- 102万円以外
年利2%なら1が正解。
では、5年後には口座の残高はいくらになっているでしょうか。利息にかかる税金は考慮しないでご回答ください。
- 110万円より多い
- ちょうど110万円
- 110万円より少ない
- 上記の条件だけでは答えられない
これも複利効果の説明ですね。100万円×(1.02^5)となります。正確には110万4080円になります。なので正解は1
インフレ率が2%で、普通預金口座であなたが受け取る利息が1%なら、1年後にこの口座のお金を使ってどれくらいの物を購入することができると思いますか。
- 今日以上に物が買える
- 今日と全く同じだけ物が買える
- 今日以下しか物が買えない
インフレは貨幣価値の下落。インフレ率よりも利息がちいさければ、購買力は下がってしまいます。このようなリスクを「インフレリスク」といいます。
以下の質問について〇か×かで答えてください。
- 高インフレの時には、生活に使うものやサービスの値段全般が急速に上昇する
- 住宅ローンを組む場合、返済期間が15年の場合と30年の場合を比較すると、通常、15年の方が月々の支払い額は多くなるが、支払う金利の総額は少なくなる
- 平均以上の高いリターンのある投資には、平均以上の高いリスクがあるものだ
- 1社の株を買うことは、通常、株式投資信託(※)を買うよりも安全な投資である※何社かの株式に投資する金融商品
〇、〇、〇、×ですね。最後の質問は投信のほうが投資先が分散されることでリスクは低下します。分散投資の仕組みになります。参考:分散投資とリスク分散
金利が上がったら、通常、債券価格はどうなるでしょうか。
- 上がる
- 下がる
- 変化しない
- 金利と債券価格は関係ない
正解は2です。債券価格と金利は負の相関関係があります。参考:債券価格のしくみ
金利が上がっていくときに、資金の運用(預金等)、借入れについて適切な対応はどれでしょうか。
- 運用は固定金利、借入れは固定金利にする
- 運用は固定金利、借入れは変動金利にする
- 運用は変動金利、借入れは固定金利にする
- 運用は変動金利、借入れは変動金利にする
正解は3です。金利が上昇するなら運用収入が増加するため変動金利のほうがめりとがあります。一方で借金は利払いの増加を防ぐため固定金利にするのが適切です。
保険の基本的な働きに関する次の記述のうち、適切なものはどれでしょうか。
- リスクの発生頻度は高いが、発生すると損失が大きい場合に有効である
- リスクの発生頻度は低いが、発生すると損失が大きい場合に有効である
- リスクの発生頻度は高いが、発生すると損失が小さい場合に有効である
- リスクの発生頻度は低いが、発生すると損失が小さい場合に有効である
正解は2ですね。死亡や自動車事故など発生確率は低いものの、自分では負えないレベルのリスク回避に保険は使います。
参考:生命保険(保険)とは
子供が 独立した50歳の男性が 生命保険(終身保険)を見直す場合、適切なものはどれでしょうか。他の事情に変化はないものとします。(1つだけ)
- 死亡保障の増額を検討する
- 死亡保障の減額を検討する
- 見直す必要はない
正解は2です。子どもが独立=自分が死亡しても経済的に困る人が少なくなるという意味になります。そのため、死亡保険は減額できます。
参考:ライフステージ別生命保険見直しのポイント
保険に関する以下の記述のうち、適切でないものはどれでしょうか
- 学生であっても20歳以上になると国民年金保険料を納める必要がある
- 自動車事故を起こした場合の損害賠償は、自賠責保険により全額カバーされる
- 生命保険は、自分や家族の変化に合わせて必要性や保障額を見直すことが望ましい
- 医療保険では、加入前に発症した病気について補償されないことがある
間違いは(2)です。自賠責保険(強制保険)というのは最低限度の補償しかされません。現実的には自賠責だけでなく任意保険の加入も必要です。
参考:自動車の自賠責保険と保険料、入り方
住宅ローンに関する以下の記述のうち、適切なものを選択してください。
- ローンを組んで住宅を購入するよりも、生涯賃貸住宅に住み続ける方が、圧倒的に資金負担が小さい
- 住宅ローンの返済方法には、元利均等方式と元金均等方式があるが、総返済額はどちらも同じである
- 住宅ローンの金利タイプには変動金利型や固定金利型があるが、固定金利型の方が変動金利型よりも常に有利である
- 住宅ローンにかかる総返済額を減らすためには、頭金をできるだけ多く用意するとともに、可能な範囲で繰り上げ返済を行うのが有効である
正解は4です。頭金を多く用意することで借りる金額を少なくしたうえで、繰り上げ返済を利用することで返済期間を短縮することでローン返済総額を最小化することができます。
参考:住宅ローンの繰上返済と借り換え
10万円の借入れがあり、借入金利は複利で年率20%です 。返済をしないと、この金利では、何年で残高は倍になる でしょうか。(1つだけ)
- 2年未満
- 2年以上5年未満
- 5年以上10年未満
- 10年以上
正解は(2)です。複利と書かれているので5年より短くなりますね。ちなみに、複利で2倍になる期間を計算するには72÷利率で計算できます。
今回は20%なので72÷20=3.6年で2倍になります。
参考:72の法則とは?複利の力を簡単計算できる魔法の数字
預金保険制度で1千万円まで保護される預金の種類に関する次の記述のうち、適切なものはどれでしょうか。
- 普通預金だけが保護される
- 普通預金と定期預金は保護される
- 普通預金、定期預金、外貨預金など全ての種類の預金が保護される
- 自己責任の原則から、いかなる預金も保護されない
正解は(2)です。預金保険に関する部分ですね。(3)の外貨預金については預金保険の対象外となります。ちなみに、1000万円を超えた部分は銀行の残された財産に応じて分配となります。このカットされる部分をペイオフといいます。
参考:ネットバンクと預金保険制度(ペイオフ)
金融商品の契約についてトラブルが発生した際に利用する相談窓口や制度として、適切でないものはどれでしょうか。(1つだけ)
- 消費生活センター
- 金融ADR制度
- 格付会社
- 弁護士
間違っているのは(3)ですね。格付け会社というのは企業や政府などの信用度を評価する会社です。S&Pとかムーディーズとかですね。金融商品の販売や契約などとは全く関係ありません。
ちなみにADRというのは「裁判外紛争解決手続き」のことで、金融機関などとトラブルになった時に仲裁を求めることができる期間です。参考:金融ADR制度とは
皆さんの正答率はどうでしたか?