私的経済ニュース解読

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ゆうちょ銀行の投資信託の不適切販売事例が計1万9591件。適合性の原則違反

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ゆうちょ銀行にも不祥事。

共同通信2019年9月12日配信

健康状態や商品の理解度を確認する社内規定に違反した不適切な契約が約1万9千件に上ることが12日分かった。直営233店のうち9割で約1万7千件の不適切販売があったことが6月に表面化し、販売を委託する郵便局での扱いも調べた結果、同様の事例が約2千件見つかった。

高齢者に対する勧誘は事前に意向を確認する必要があります(日本証券業協会の指針)。これを行っていなかったようです。

 投資商品というのは元本割れを起こすリスクがある商品です。そうした商品だからこそ「適合性の原則」というものが求められます。

適合性原則とは?

適合性原則 (てきごうせいげんそく)とは、金融機関において顧客の知識、経験、財産、投資目的に応じた提案をしなければならず、不適当な勧誘を行ってはならないと言う規制。たとえば、安全な投資を望む投資家に値動きの大きなリスク商品を販売、勧誘するのは適合性原則違反となる。

この適合性の原則については「こちら(PDF)」で規制の内容や沿革、適用範囲などが説明されています。

ながいですけど、なんで問題になっているの?という方はご一読いただくと分かりやすいかもしれません。

 

適合性の原則はどういう手続きなのか?

たとえばネット証券に口座開設をする際にはいくつかの質問に回答します。

  • 投資経験はある?
  • 過去に投資したことある商品はある?
  • 投資に関する考えたは?(利回り重視、運用益重視、元本安全性重視など)

こういった質問です。口座開設の経験がある方はお分かりになると思います。

これも適合性の原則を守るためのルールです。元本安全性重視という方に株式や投資信託を売るのは本人の希望と合致していないという話になるわけです。

この他にも、高齢者に対しては日本証券業協会は以下のような指針を儲けています。

協会員は、高齢顧客に有価証券等の勧誘による販売を行う場合には、当該協会員の業態、規模、顧客分布及び顧客属性並びに社会情勢その他の条件を勘案し、高齢顧客の定義、販売対象となる有価証券等、説明方法、受注方法等に関する社内規則を定め、適正な投資勧誘に努めなければならない。

また、複雑な商品については以下のような指針(リーフレット)も定めています。

  1. 役席者による面談(目安75歳以上のお客様)
  2. 翌日以降に受付手続きを行い、改めて意向確認(目安80歳以上)
  3. 買付完了後には担当者とは別の人が連絡する(目安80歳以上)

こんな感じで、元本変動商品である投資信託の販売については業界規制はちゃんとあります。あくまでも自主的制なのですけど、それを守らないというのであれば、何のための業界団体なのか?という話になります。

私の知っている限り、ノルマ証券とか、野菜証券などとも揶揄される某大手証券会社であっても、高齢者に対する投資信託の販売ルールはかなり徹底されていました。

ゆうちょ銀行がこうしたバカみたいな問題を起こしたのは業界関係者からすれば、またゆうちょか……という気持ちでしょう。

 

そもそも、ゆうちょ銀行は投資家に対して全くフレンドリーじゃない

ゆうちょ銀行って、扱っている投資商品はかなりえげつないことでも知られています。

以下はゆうちょ銀行が扱っている投資信託の中でも売れ筋商品らしいです。顧客の事なんか1ミリも考えてないことがわかるようなラインナップです。

引用元:ゆうちょ銀行の投資信託、NISAやiDeCoをゆうちょで買うのはアリかナシか

ファンド名
販売手数料
信託報酬
スマート・ファイブ(毎月決算型)
【愛称:なし】
2.16% 1.08%
リスク抑制世界8資産バランスファンド
【愛称:しあわせの一歩】
1.08% 0.7452%
JP4資産バランスファンド(安定成長コース)
【愛称:ゆうバランス 安定成長コース】
1.08% 0.4968%
JP4資産バランスファンド(成長コース)
【愛称:ゆうバランス 成長コース】
1.08% 0.4968%
ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)
【愛称:なし】
2.7% 1.6416%
JP4資産バランスファンド(安定コース)
【愛称:ゆうバランス 安定コース】
1.08% 0.4968%
HSBCワールド・セレクション(安定成長コース)
【愛称:ゆめラップ安定成長】
1.62% 1.2204%
東京海上・円資産バランスファンド(毎月決算型)
【愛称:円奏会】
1.62% 0.9072%
新光日本小型株ファンド
【愛称:風物語】
3.24% 1.728%
ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)
【愛称:なし】
3.24% 1.188%

いずれも、販売手数料が発生するタイプで信託報酬も1%ちかいという、コスト高のファンドが多くラインナップされています。

  • 販売手数料信託報酬が高いファンドばっかり
  • 毎月分配型という分かりやすいけど、非効率的なファンドばっかり

こういう時点で高齢者をカモにしているということが丸わかりです。販売手数料は今は無料のもの(ノーロードファンド)も多く2%、3%というファンドはかなり高額です。

また、毎月分配型のファンドは毎月分配金がもらえるので、お得なように感じますが、感じるだけで全然お得じゃないです。「毎月分配と年1回分配。お得な投資信託はどっち?」などでも説明されているように、運用は極めて非効率です。

 

じゃあ、インデックスファンドならいいのか?と言われるとそんなことはありません。

ゆうちょ銀行の店頭で販売されている日経平均連動型のインデックスファンドは「大和 ストック インデックス 225 ファンド(販売手数料:2.16%、信託報酬:0.52%)」というクソ商品です。

ちなみに、こうした日経平均連動のファンドなら販売手数料は無料、信託報酬も0.3%以下です。

 

結局、こういう取扱ファンドの中身にその会社の顧客(投資家)に対する姿勢が表れているのだと思います。