私的経済ニュース解読

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スルガ銀行のシェアハウス借金棒引き(ノンリコース)を検討。債務免除益はどうなる?

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スルガ銀行とシェアハウス物件に対して投資をした投資家との間での不正融資問題ですが、一定の進展が見られそうです。

シェアハウス物件を投資家がスルガ銀行に引き渡せば借金を棒引き(免除)するという方針であると報道されました。

リコースローンとして契約していたはずが、いつの間にか、ノンリコースローンになってたぜ!って話ですね。

 

シェアハウス借金、物件手放せば帳消しへ スルガ銀が対策
日本経済新聞 2019年11月20日

スルガ銀行による不正な融資で過大な借り入れをしたシェアハウスの所有者が、物件を手放せば借金の返済を免除されることで調整が進むことが20日、分かった。同行のシェアハウス融資を巡っては返済に行き詰まる所有者との係争が続く。同行は創業家との資本関係を解消したのに続き、不正融資問題を解決して不祥事に区切りを付ける。

関係者によると、スルガ銀はシェアハウス向けの債権を第三者に売却するための入札手続きを始めたもようだ。投資ファンドなどが、転売可能な価格を見積もって応札する見通し。シェアハウスの所有者が土地と建物を物納すれば、借金の返済をなくすことを債権売却の条件としている。

借り入れには自己責任が伴うものの、スルガ銀による書類の改ざんなどで身の丈を超える借り入れをした人は多い。スルガ銀は被害者補償の観点で物納を受け入れるようだ。ハウスの運営を続けたい所有者は対象外だ。

ということです。シェアハウスオーナーからすれば、非常にありがたい申し出になるといえそうです。スルガ銀行にとっては損失が発生することになりますが、貸倒引当金は計上済みということで、財務負担は限定的になりそうです。

で、問題なのがシェアハウスのオーナーですね。借金棒引きを受け入れることで一つの問題が生じることになります。

債務免除益です。

 

債務免除益とは?

債務免除は借金棒引きです。本来は返済しなければならない借金が減額されるという場合、その減額分は経済的な利得を得たと見做されるわけです。

こうした債務免除によって得られたりえっきが「債務免除益」です。税法上はこの債務免除益は所得として扱われます。

<法人の場合>
消滅した金額が益金となります(特別利益)

<個人の場合>
同じく債務免除によって消滅した債務は所得と見なされます。ただし、所得税法上の例外措置があります。

所得税法第44条の2
居住者が、破産法に規定する免責許可の決定又は再生計画認可の決定があつた場合、その他資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合にその有する債務の免除を受けたときは、当該免除により受ける経済的な利益の価額については、その者の各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入しない。

 太字の解釈次第では、債務免除益が課税されないケースがあるわけです。じゃあ、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」というのはどういう時なのか?という話は通達にあります。

法第44条の2第1項*1に規定する「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」である場合とは、破産法(平成16年法律第75号)の規定による破産手続開始の申立て又は民事再生法(平成11年法律第225号)の規定による再生手続開始の申立てをしたならば、破産法の規定による免責許可の決定又は民事再生法の規定による再生計画認可の決定がされると認められるような場合をいうことに留意する。

 こんな感じです。いや、わからないですよね。

ただ、シェアハウスオーナーにとってはこれが適用されるかどうかが、スルガ銀行が借金棒引きをしてくれた後の問題となりそうです。

シェアハウスオーナーには本業はしっかりとした収入があるサラリーマンも少なくありません。そうした人が「資力喪失」と見なされるかどうかは微妙です。

スルガ銀行は、不正融資があったという負い目もあるのか、投資家に対してかなり譲歩しています。

一方で課税当局としては、そんな個別事情は知ったことではなく、収入があるなど資力喪失といえないのであれば、課税してくるでしょう。金額にもよりますが、そうなると納税のための資金調達が必要になってきます。

この辺りをどう考えるのか?実際にどの程度の負担をしなければならないのか?という点は難しいところです。

*1:免責許可の決定等により債務免除を受けた場合の経済的利益の総収入金額不算入