私的経済ニュース解読

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賃貸仲介手数料訴訟で東急リバブルの敗訴が確定。過去に払った仲介手数料は請求できる?

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賃貸住宅を借りるときに発生する仲介手数料について、原則は半月分であるとして争った訴訟で東京高裁は地裁を支持する判決を言い渡しました。これによって敗訴が確定し、国が定める0・5カ月分を超える手数料の返還を命じました。

第1審:東京簡裁(請求棄却)
第2審:東京地裁(原告逆転勝訴)
第3審:東京高裁(地裁支持)

という形です。

これまでのやり方だとNGだといわれたわけで、不動産業者(仲介事業者)の方々は対応を迫られることになります。

また、過去に払った仲介手数料についても遡及して返還訴訟などを起こされるリスクもあるということになりますね。

 

もともとの争点はどこ?

賃貸不動産の仲介手数料については国土交通省の告示(宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受け取ることができる報酬の額)で以下のような規定があります。

第4 賃貸の媒介に関する報酬の額

宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該媒介が使用貸借に係るものである場合においては、当該宅地又は建物の通常の借賃をいう。以下同じ。)の一月分の一・〇八倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たつて当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の〇・五四倍に相当する金額以内とする。

※消費税8%のまま

  • 仲介手数料の上限は合計で1カ月まで
  • 依頼者の承諾を得ている場合を除き、賃貸借人から0.5カ月ずつ

ザックリ書く上の通りです。仲介業者は1か月分までしか仲介手数料を受け取ることはできないわけです。一方で“依頼者の承諾を得ている場合を除き”借主と貸主で0.5カ月以内ね。ってことなわけです。

この太字の“依頼者の承諾を得ている場合を除き”という部分から、借主が承諾しているから1か月分を丸々借主からもらうというのが、賃貸不動産の慣例だったわけです。

で、この慣例に対する裁判だったわけです。

 

訴訟と判決内容

その訴訟内容については依頼者(借主)が承諾していないっていう主張だったわけです。

不動産会社の契約書にはもちろん、借主が1か月分の手数料を支払うという内容は明記されていました。そして借主は申込書に押印しています。つまり、これをもって依頼者の承諾を得ていたわけでしょう。

で、判決においては、この契約書段階では「承諾なく受け取った」という判断になったわけです。

じゃあ、どのタイミングまでに1か月分の負担を借主がすることを告知・承諾してもらわなければならないのか?といえば“仲介依頼の成立まで”とされています。

このタイミングがどの時点なのか?というところが重要になりそうです。

35条書面の提出でしょうか?それとももっと前?

今後は仲介業者は色々と対応を迫られそうです。

 

あと0.5か月+0.5カ月で大家さんからも取ればいいじゃん

そりゃそうなんでしょうが、大家さんサイドからは不動産仲介はAD(広告料)という名義でお金取っています。

ADというのは、依頼者から特段の広告などの要請があった場合、その広告料などを合わせて請求できるという規定を使ったものです。

下手にこちらに突っ込んでいくと、それこそやぶへびになる可能性があるんですよねぇ。

 

消費者金融のグレーゾーン金利の返還請求(過払金返還訴訟)と同じになる?

で、さらに問題になる可能性があるのが、過去への遡及です。

消費者金融はかつて、利息制限法と出資法の上限金利との間の“グレーゾーン金利”について裁判で負け、過払金返還訴訟の山で大きなダメージを受けました。

仲介手数料の返還についても、もしかしたら同じようなことになるかもしれません。賃貸仲介が主要事業となっている不動産会社にとっては戦々恐々としているかもしれません。

過払金返還ほど大きな金額に貼らないかもしれませんが、大半の過払い金が時効を迎えつつある中で弁護士さんはアップしているかもしれませんね。

まぁ、でも争ったとしても返金されるのは家賃の半額分だけですし、わざわざそれで動く人は少ないのかな?ちなみに、時効は5年ですかね。