私的経済ニュース解読

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富士通の間接部門5000人の配置転換は整理解雇への道筋なのか?

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大手電機メーカーの富士通は経理や総務といった間接部門(売り上げや利益に直接は結び付かない部門)の従業員の内、約5000名を配置転換すると発表しました。

いきなり、経理とか人事やってた人が、営業とかシステムエンジニアとかに転向できるものなの?という話ですが、これは実質的にはリストラの前触れ的な行動にあたります。

富士通は今後、大きな人員削減を計画しているものと思われます。

 

富士通が5000人の配置転換

日経新聞をはじめとして大手の新聞社が報じています。

2018/10/27 日本経済新聞 朝刊

富士通は26日、2020年度をめどにグループ全体で5000人規模を配置転換する方針を示した。対象は人事や総務、経理などの間接部門で、成長分野であるIT(情報技術)サービス事業に振り向ける。非中核と位置付ける製造分野の切り離しも進め、事業の選択と集中を加速する。  都内で開いた経営戦略説明会で発表した。対象となる間接部門にはグループ全体で約2万人の社員がいる。研修を通じて営業やシステムエンジニアなどITサービスに関わる職種への転換を促す。グループ会社の間接機能を富士通本体へ集約することも検討する。  塚野英博副社長は「全社を横断的に見ると、専門的な営業やコンサルティング業務などで人が足りていない。コストの点からも適材適所な活用を考えたい」と話した。

読売新聞はもう少し突っ込んでいます。

2018/10/26 読売新聞

富士通はグループ全体で間接部門に約2万人の従業員がいる。配置転換後の仕事に合わない従業員には、転職を支援する制度を提案することもあるという。

“転職を支援する制度を提案”ってのは再就職をするためにいろいろやらせるってことです。

 

会社を辞めるのは簡単、でも辞めさせるのは難しい

会社を辞めるのは簡単です。法律的には14日前に通告すれば退職できます。これはアルバイトはパートはもちろん、正社員でもそうです。一応、会社のルール的には1カ月以上前に伝えること、みたいなことも書かれているはずですが、揉める前提なら14日前であればOKです。

参考:アルバイトと退職、退職、辞め方

 

一方で、会社が社員を辞めさせる場合、つまり解雇というのは簡単ではないんですね。「労働契約法第16条」という法律があります。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

曖昧ではありますが、合理的な解雇じゃないとだめよという話になるわけです。この条文だけだと、具体性はありませんね。

ただ、日本ではこの解雇を巡っては裁判が多数積み重ねられており、ある程度は先例があります。特に、今回のように大規模なリストラは「整理解雇」と呼ばれますが、それには4要件があるとされます。

 

  1. 人員削減の必要性(その部門を削減する理由)
  2. 解雇回避努力義務の履行(希望退職者募集、出向、配置転換など)
  3. 解雇対象者の合理性(人選基準)
  4. 手続きの妥当性(労使協議の有無)

 

こんな風にいろいろあるわけです。儲かってないから、この部署閉鎖ね。そして全員解雇!みたいなことはできないわけです。

不当解雇として労働審判や裁判に発展するケースが少なくありません。

money-lifehack.com

 

今後、富士通の間接部門で働いている人はどうなるの?

正直、これまで20年経理一筋だった人間に営業になれとか、SEとしてプログラムを勉強しろといっても難しいでしょう。

結局、こうした転換策は「解雇を回避するための努力をしたよ」という形になるわけです。

 

ちなみに、大企業にとって整理解雇を行うというのは、有能人材大量流出のリスクがあります。

それは、整理解雇を行う前に実施する配置転換や希望退職者募集などを行うためです。

特に退職金積増で退職者を募った場合、会社にとって辞めてほしくない有能な人材(いくらでも転職できる人)から辞めていきます。

一方で、転職価値の低い人は会社に残ったほうが合理的なので退職に応じないわけです。

 

会社にとって「解雇」というのは簡単なものではないんですね。

 

(追記)2850人が早期退職、2000人が配置転換へ

整理解雇にまではいきませんでしたが、結果として2850人が早期退職に応募、2000人は配置転換を受け入れたようです。

日本経済新聞( 2019/2/19)

富士通は19日、早期退職制度により3月末までに2850人を削減すると発表した。間接部門から営業などへの配置転換も進める。米アマゾン・ドット・コムをはじめとするIT(情報技術)大手がクラウド市場で大きなシェアを握るなど、業界が激しく変化するなかで構造改革を急ぐ。 2018年10月にグループで5千人規模の配置転換を実施する方針を打ち出していた。グループ外への転職を促す「転進支援制度」で退職割増金を加算。今年1月末までに2850人が応募したことから、2千人強を配置転換することにした。人事や総務などに所属する人材の一部は研修を受けたうえで、営業やシステムエンジニアなどITサービスに関わる職種に転換する。

間接部門の大胆なリストラに富士通は成功した(?)わけですが、半数以上は配置転換を受け入れずに退職(転職)したわけです。

富士通の業績は(現状では)決して悪くありませんので、早期退職に関しては積み増し退職金などもあったことでしょう。

一方の配置転換を選択した人は転換先(営業やSE)で結果を残せなければいずれ降格といった形になるでしょう。