私的経済ニュース解読

自分が気になったニュースを私の視点で文章にしていきます。

公的年金制度破綻?経済成長なければ年金は2052年に枯渇、制度改革で現役世代の負担増は必至

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もう年金やめちゃえよ。

そんな声も上がりそうな報告が厚生労働省から出されましたね……。やべーやつ。

公的年金の給付水準を示す指標に所得代替率というものがあります。現役世代の輸入に対して年金収入がどの程度あるのか?というものですね。

これ2019年度は61.7%です。これが今後悪化するというわけです。悪化自体は織り込まれていましたが、経済成長しない前提だと年金は2052年に枯渇するという試算がでています。

2052年だいぶ先と思うかもしれませんけど、現行制度(65歳受給開始)を前提にすれば現在32歳の人が65歳になるときに年金枯渇ってわけです。32歳以下の人は、年金を食いつぶされた状態で、老後を迎えることになるんですね。

多分その時は受給開始は65歳じゃないと思うけど……。

それに伴い、制度改革は必至であり、どうするかっていうと、現役世代からもっと徴収しろ!って話になるみたいです……。

 

ケース6(経済成長マイナス)なら2052年に国民年金の積立が枯渇

ちなみに、最良のケースでも所得代替率は2046年に51.9%にまで下落するとされており、老後2000万円貯蓄で物議をかもしましたが、そんなんじゃ全然足りないよ問題になりそう……。

年金先細りの未来図 給付水準、30年かけじわり低下
日本経済新聞 2019年8月27日

ケース6は長期にわたってマイナス成長が進む厳しい想定だ。43年度に50%に到達。さらに機械的に抑制を進めると、52年度には国民年金の積立金が枯渇してしまう。現役世代の保険料と積立金を活用して引退世代の年金を支払う現行制度の枠組みは崩れ、現役世代の保険料全額を年金給付に充てる「完全賦課方式」に移行する。所得代替率は36~38%と大きく低下する。

ケース6って最悪のケースみたいな書き方ですけど、失われた20年とか30年とか言っている今、このケース6が実現する可能性高そうな気もするんですよね。

 

 

制度を破たんさせないための現役世代の改革メニュー

手をこまねいて待つわけにいかないということで厚生労働省が出した改善メニューがこちら。

  • 厚生年金の適用拡大
  • 基礎年金の拠出期間を40年~45年に延長
  • 75歳まで繰り下げして受給開始
  • 65歳以上の在職老齢年金廃止
  • マクロ経済スライドをフル発動

この辺りがあるみたいです。支え手に対する負担増メニューと受給者に対する給付抑制の両方があります。

ただし、

給付抑制の強化は慎重姿勢だ。「給付増の抑制ではなく、支え手を増やすことなどで給付をいかに確保するかが今後の課題」。厚労省は27日に公表した財政検証の関連資料でこう明記した。

厚労省はこうした試算を踏まえ、将来の年金給付水準を底上げする効果が大きい厚生年金の適用拡大を急ぐ構えだ。

ということで、高齢者にはあまり負担させず、現役世代に負担を押し付ける方向を検討するみたいです。なんだそりゃ。

厚生年金の適用拡大については以下のようなメニューが提示されています。

  • 企業規模要件を廃止
  • 賃金要件を廃止
  • 月収5.8万円以上の全員を加入させる

企業要件の廃止」というのは、現在の厚生年金の加入条件は2つあり企業規模が501名以上の会社とそうでない会社とで違っています。中小企業は加入条件が厳しくなっています(3/4ルール)が、大企業は緩くなっているわけです。

で、大企業向けの社会保険加入要件は以下のようになっています。

  1. 週の労働時間が20時間以上
  2. 賃金月額が月8.8万円(年106万円以上)
  3. 1年以上の使用されることが見込まれる
  4. 従業員501名以上の勤務先で働いている
  5. 学生除く

こうなっています。企業要件の廃止って言うのは、この(4)が消えるというわけです。

money-lifehack.com

それを撤廃すれば、中小企業で働く人も社会保険に加入しやすくなるわけです。「賃金要件の廃止」というのは(2)が消えるわけですね。

 

すると以下の労働者が厚生年金に加入するわけです。

  • 週の労働時間が20時間以上
  • 1年以上の使用されることが見込まれる
  • 学生除く

こうなると、雇用保険の加入ルールとほぼ同じになりますね。

最後の「月収5.8万円以上の全員を加入させる」は労働時間関係なく、月収5.8万円以上なら全員入れるというものです。現行制度では学生の社会保険加入は3/4ルールのままですが、学生であっても月収5.8万円以上なら社会保険に入れるって意味でしょうか。

 

セットでもれなく健康保険にも加入、第3号制度も廃止?

厚生年金加入ってことはセットでもれなく健康保険にも加入することになるわけで、健康保険料負担も追加されます。

でも5.8万円稼いだら年金も健康保険も取られるとなったら、普通のサラリーマン妻はパートとかしないよね。第3号被保険者やっている方が圧倒的にお得だし……。

nenkin-hoken.com

ってことは、同時に第3号被保険者も廃止したりするのかな。しなきゃ、パート大量離職だよね。

 

負担増は限界?給付を抑えるしかない

社会保険料負担率の推移(労使合計)

社会保険料負担率の推移(労使合計)

上のグラフは社会保険料の収入に対する負担率の推移です。昭和30年は労使合計で10%以下だったものが平成28年には30%に肉薄しています。

この負担率って税込年収に対する割合です。年収500万円の人なら年間に150万円も健康保険料+年金保険料を払っているという計算になります。

実際には労働者負担は半分ですが、会社からは労働者に対してそれだけ払っているわけなので目に見えないだけで実際には労働者が負担しているのと同じことです。

現役世代からこれ以上の保険料徴収は厳しいでしょう。

 

とすると、給付抑制しかないわけで健康保険と年金をパッチワーク的に対応するのでは限界があると思います。