私的経済ニュース解読

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2019年6月からの“ふるさと納税の新規制”に伴う寄付ポータルサイトと上場3社に対する業績インパクト

 

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2019年6月から、ふるさと納税に対しては

・地盤産品であること
・返礼品の返礼率は30%以内であること

が厳密にルール化され、認められない返礼品を提供する自治体は、ふるさと納税から排除されます(実際には、個人が寄付をしても寄付金控除が受けられなくなる)。

で、それが施行されたら、ふるさと納税をやっている寄付サイト(ポータルサイト)はどうなるのか?ってことを検証してみました。楽天ふるさと納税、さとふる、ふるなび、ふるさとチョイスとかですね。

結構やばい感じかもしれません。

 

ふるさと納税に対する2019年6月以降の規制

地方税法等の一部を改正する法律の成立により、6月1日以降、ふるさと納税に係る指定制度が創設されます。

 具体的には、総務大臣が以下の基準に適合した地方団体をふるさと納税(特例控除)の対象として指定する仕組みです。

    1. ① 寄附金の募集を適正に実施する地方団体
    2. ② (①の地方団体で)返礼品を送付する場合には、以下のいずれも満たす地方団体
      • 返礼品の返礼割合を3割以下とすること
      • 返礼品を地場産品とすること

この改正は、6月1日以後に支出された寄附金について適用となりますので、指定対象外の団体に対して同日以後に支出された寄附金については、特例控除の対象外となりますのでご注意ください。

ふるさと納税に係る指定制度について(総務省)

また、本記事内における根拠は「総務省Q&A」によるものです。本文を観たい方は原文(PDF)をご覧下さいませ。

 

総経費率は50%以内というルール

別に隠れてないですが、ふるさと納税ポータルサイトに影響しそうな項目としては、募集経費総額5割以下という部分が該当しそうです。

お礼の品は3割までですが、これを3割としたら差額の2割までしか募集経費とできないという事になります。

  • 返礼品調達価格:寄付総額の3割以内
  • その他の総費用:寄付総額の2割以内

ということになります。ふるさと納税の寄付サイト(ポータルサイト)からすれば、募集経費(2割以内)の一部が手数料収入となるわけです。

2018年12月6日:東海テレビ

東海テレビは愛知・岐阜・三重の125すべての市町村に対し、昨年度のふるさと納税の受け入れ状況とともに、手数料などとしてポータルサイト運営会社に支払った金額をアンケートで取材しました。手数料や広告料など、サイト側に支払われたのはあわせて19億6千万円あまりで、寄附全体の10.2%、サイトを通じた寄附の11%に上りました。  この割合を昨年度の全国でのふるさと納税の寄附3653億円にそのまま当てはめると、およそ370億円がサイト側に支払われた計算になります。

寄付サイトだけで10%以上の手数料を平均して取っていたという数字ですが、これは平均値なので、ふるさと納税に積極的だった自治体はもっと手数料や広告費を払っていたはずです。

また、この20%以内の部分には、寄付サイトへの手数料以外の諸経費も含まれるわけですから、これまでと比べてポータルサイトが受け取れる手数料は少なくなると思われます。

自治体から手数料を取って、ユーザー向けにポイント還元とかしてた寄付サイトはダメージが大きそうです。

一方で、ふるさとチョイスのように、もともと低手数料でやっている感じのところは募集総経費ってところは問題にならないかもしれません。

 

一部の寄付サイトにとっては事業自体がNGになる場合もある

ふるさと納税の寄付サイトにとっては一部の寄付サイト自体が事業できないケースがありそうです。

区域内で肥育されたブランド牛を扱う首都圏等の高級な飲食店において使用できるグルメポイント

これはおそらく、ふるなびグルメポイントのようなサービスの事を指しているものと思われます。たとえば山口市に寄附をして、山口市で取れた「フグ」を使った料理を出しているお店で使えるポイントを返礼品にするといった具合のサービスですね。

完全にNGな例として挙げられると事業継続は厳しそうな気がします……。

参考:ふるさと納税でレストランの食事。ふるなびグルメポイントの活用術

 

 金券や家電類に頼っていたポータルサイトは集客が激減しそう

また、返礼品に対する規制(地場産品)についても一部の自治体が2018年に屁理屈的な地場産品を用意したことからかかなり厳しめの設定になっています。

金券やアップル製品のような耳目を集めるような内容の返礼品は難しく、お肉やお米、魚介類といったいわゆる一次産業品を中心とせざるを得ないような感じになっています。

商品券、旅行券やアイスクリーム券、家電のような返礼品で寄付を集めていた自治体(寄付サイト)からすると寄付受付は格段にしにくくなりそうな感じがします。

特に、旅行券などの金券は1件あたり数十万、場合によっては数百万単位の寄付を受け付けし易かった傾向があります。こうした高額所得者からの寄付が減るのは、金券中心だった寄付サイトにとってはかなりの痛手になるのではないかと思います。

 

ふるさと納税寄付サイトへの影響

今回の見直しで、ふるさと納税というマーケット自体はそう小さくなならないと思います。寄付でお肉やお米、果物とかもらえること事態は変わりないですからね。

一方で、高所得者からは、金券類や家電製品といったまとまった金額を一度に寄附できる寄付案件がないと、面倒すぎてやってられないという動きになる可能性があると思われます。

そうなると、寄付件数自体はそこまで減らなくても寄付の絶対額は小さくなる可能性は十分に考えられると思います。

寄付サイトにとっては、今回のルール変更は結構な痛手となりそうです。上場企業に絞って影響の大きさを考えてみたいと思います。

 

ふるさとチョイス(チェンジ:3962)

もともと手数料安いので影響軽微かと思います。

 

楽天ふるさと納税(楽天:4755)

楽天市場の一分野として運営されているので手数料はやや高めだと思われます。ただ、取扱商品はもともと地場産品(一次産品)が多いイメージなので、そこまで大きなダメージはないかもしれません。

 

ふるなび(アイモバイル:6535)

直近の業績はふるさと納税頼みになっている感があります。

moneyinfo.hatenablog.jp

同社のふるさと納税に対する手数料の高さは不明ですが、昨年末実施のAmaozonギフト券10%還元などを見るとそれなりの手数料は取っていそうです。

何よりも「金券」や「家電」を推して寄付を集めていたとみられるため、新制度下では他のふるさと納税サイトと比較して競争力の低下が懸念されます。

さらに、グルメポイントサイトがNGとなると、業績的にも影響を与えてきそうな気がします。

ちなみに、同社の株主優待はグルメポイントサイトのグルメポイント付与となっているので、株主優待がどうなるかも影響しそうです。

 

まとめ

ふるさと納税は国策としてスタートしたものです。「国策に売りなし」というのは相場格言の一つとしても知られています。

今回の制度変更はその国策に対する逆風となるわけで、こうした関係会社はマイナスのインパクトを受けることになりそうです。